ぽまいら〜0819111111 作:ハナクソ☆ホジッタ

「む……」
 その様子を見ていたコウは不満そうにつぶやく。
『シンキ! これで予定を取り戻せる!』
「……ああっ」
 シンキ達に吹く追い風。
 それを確かに背で受けて感じていたシンキだが、その時、
「シンキ様! 敵軍から使いが参りました!」
「きたっ……」
 伝令係の兵士から渡されたのは一通の文書。
「『兵士に無駄な血を流させる必要はない。大将同士での一騎打ちにて勝敗を決するべきと提案する』、か」
 劣勢ながらも最強の国の君主であるその威厳がこめられた文書。
 これがただの君主の書いたものなら強がりが見えすいて笑ってしまう所。
 しかしシンキは真剣な眼差しでその文書を見つめた。
「シンキ様、いかがなさいますか……」
 沈黙するシンキに伺いを立てる伝令係の兵士。
「……この一騎打ち、受けて立つっ!」
 シンキは文書を投げ捨てて、大きな声で言い放つ。
 陣膜の外に待機するコウの軍の使いにも聞こえる様に。
「全軍に伝えよ! 後退し、大将同士の一騎打ちの場を設けろと!」
「ははーっ!」
 兵士は即座に駆けていき、草原で争う兵士達に伝令を伝える。
 こうしてシンキとコウは囲む兵士達の中心で相まみえた。
「……」
「久しぶりだな」
 沈黙のコウ。
 挑発をこめた挨拶を投げるシンキ。
 二人は落ち着いた様子で睨み合う。
「何故一騎打ちを受けた?」
 コウから告げられた疑問。
 それをシンキは軽く笑って答える。
「何故なんて変なことを聞くやつだな。そっちから仕掛けてきたんだろう」
「……」
 事実、一騎打ちの申し出はコウからあったもの。
 しかしそれはおかしな点があった。
「兵卒を扱う戦いにおいて優勢だったにもかかわらず一騎打ちを受けるそれは得策とは言えない」
「まあ、そうだな」
 シンキの軍は戦争において優位な状況にあった。
 そのまま圧せば勝利していた可能性は高い。
 そんな折に入ってきた一騎打ちの申し出。
 これを受ける理由などあるわけがなかった。
「あんたを一騎打ちで倒せばそっちの軍の兵士達は完全に敗北を認めるだろう。だからこの一騎打ちは受ける価値があった」
「兵士の士気、か」
「そうだ。最強の国の兵士だ。将官でなくとも相応の自負があるはずだ。下手に意気を上げて暴れられても面倒だからな」
 追いつめられた人間が取る行動。
 その中の一つに暴走するというものがある。
 せっかく戦争に勝利しても窮鼠猫を噛むように突発的な行動をされては後味が悪い。
 そうした考えでシンキは一騎打ちを受けたという。

Blind Justice Ver2.71
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