ぽまいら〜08181111111 作:ハナクソ☆ホジッタ
「どうやら奴らも気づいたようだな」
「みたいネ。ワタシが出国した記録はホーリエで偽装したものだってことに」
「あっ……」
コウとチュンは示し合わせたようにうなずく。
「まあいい。チュンよ。奴らを蹴散らせ」
「任せるアル!」
チュンはそのまま進軍を続け、あっという間にシンキの軍の兵士と衝突。
激しい槍さばきで少しずつシンキの軍を押していく。
「前衛での負傷者多数! このままでは我が軍が壊滅します!」
「くっ……」
兵士の言葉を聞いてシンキは歯噛みする。
まさか伏兵としてチュンが襲撃してくると思っていなかった。
そんな中、チュンが戦場から叫ぶ。
「シンキ! もう年貢の納め時ネ! ワタシの手でその首を刈り取ってやるアル!」
「どうして、どうしてなんだよっ!」
「……何が、アル」
「あんたはホーリエのことを知ってたんだ。なら俺がはめられてたことだってわかってたんじゃあないのか!?」
シンキは思い返す。
カナン王国から追放された決議。
それはもちろんチュンも追放に賛成していた。
「あんな横暴な追放にどうして賛同したんだ。なんでなんだよっ」
「なんでもなにも、賛成だと思ったからネ」
「おかしいだろ! それじゃあなんであんたは右も左もわからない新参者の俺に声をかけたんだ。そして丁寧にしてきたんだ!」
「それは……」
シンキの激昂の中の問いにチュンが答えようとすると、コウが割って入った。
「それはお前を捨て駒として使うためだ」
「っ!」
それは決定的な悪人の言葉。
新参者をいいように使い、私腹を肥やすそのままの意味。
「聞いたか! あいつはとんでもない悪人だ! あんなやつと一緒に戦うことに何の意味がある!」
圧倒的悪を前にシンキは心理的に勝利したと確信を持った。
チュンがそれほどまでの悪党と共に歩もうとする存在だと思っていなかったから。
「あんたは面倒見のいい、優しさを持っている。俺はわかる。あんたに誘われた俺だから!」
シンキはこの大陸についてすぐのことを思い返す。
それは膨らむ期待の隅にあった心細さ。
単身で乗り込んできたこの大陸でどうしていいかわからず、途方に暮れたその時に声をかけてきたのがチュンだった。
「なあ、そんな奴の命令に従うことは無いだろ。俺達と一緒にあの悪人を倒そう」
シンキは感謝の意をこめて語り掛ける。
共に歩める相手だと信じて。
「そうアル。お前の言うとおりネ」
「ならっ」
「でも、それはあんたも、そしてワタシも同じアル」
「えっ」
チュンは一度俯きかけ、しかし顔を上げてシンキを睨んだ。
「ワタシもまた同じ経験をしたアル。一人ぼっちで歩いていた時にあの人に声をかけられて」
「あ、あの人……」
「そうアル。それがコウさんネ」
チュンもまたシンキと同じく孤独を感じていた時分があった。
そんなときに将官の勧誘を行ったのが現カナン王国君主のコウだった。
「ワタシはあの人が悪人だろうと関係ないアル。出会ったあの時から育ててもらった恩を返しきるその時まであの人と共に進むネ!」
「くっ……」
チュンは全軍に命じ、さらなる猛攻を仕掛けた。
シンキの軍はさらにさらに後退を余儀なくされる。
すでに負傷し、戦闘不能になった兵士や敗走し逃げてしまった兵士も大勢。
「このままじゃっ……」
敗ける。
そう思ったその時、
『アルカトラズ!』
「ぐあっ!」
チュンは身動きを封じられ、空高く飛び上がった。
『よし、外交官を投獄した!』
「リタ!」
リタの使用したペットにより外交官であるチュンは捕縛。
その身がシレジア王国の牢獄へと転移し、指揮官を失ったチュンの軍の兵士達は散るように敗走していった。