ぽまいら〜081722222 作:ハナクソ☆ホジッタ

「来たな」
 カナン王国からコウの軍勢が防衛のために出てきたことを確認し、シンキは一度深呼吸をする。
『予定通りだ』
「そう、だな」
『なんだ。今更緊張しているのか』
「いや……」
 シンキは否定しようとしたものの、それ以上の言葉が出なかった。
 何故なら実際に緊張しているから。
『無理もない。お前を失墜させた張本人が打って出てきたんだからな。だが、お前は勝つ。そうだろう?』
「……ああ」
『よし、そうしたらあとは作戦通りに動け』
「わかった」
 リタからの指示を受けてシンキは陣形を展開する。
「全軍! 防御陣形! 敵の動きを見定めるんだ!」
 シンキの第一手は草原の中での防御陣形。
 並みの相手ならば突撃陣形を展開して速攻を仕掛けることで一気に畳みかけることも可能だったかもしれない。
 しかし相手はこの大陸において古を知る存在。
 これまで蓄えた知識の中でそんな速攻を退ける手立てを持っていることをシンキは聞かずともわかった。
「む、奴はどうやらごり押ししてくるつもりのようだな」
 シンキの防御陣形に対してコウは攻撃陣形を展開し、そのまま草原をまっすぐと進軍してくる。
「初期陣形はこっちの優勢だ! 臆することなく戦え!」
 コウの軍勢は十分な修練を積んだ猛者の集まり。
 その圧は果てしなく、シンキの軍の兵士たちはわずかに腰が引ける。
 しかしシレジア王国の君主となったシンキの鼓舞が届き、兵士たちは槍を構えて進む。
「いいぞ! 敵軍は気圧されている!」
 シンキの軍の勢いに圧され、わずかに後退するコウの軍の兵士達。
「次は攻撃、突撃、防御の順に陣形を展開! 深追いせずに敵軍を確かに削るんだ!」
 指示に従い兵士達は右へ左へ動き回り、陣形を展開する。
 そのどれもがコウの軍の展開する陣形と相性が良く、シンキは優勢を保った。
「ここまでうまくいくとは。さすが古にいた男神の言葉、か」
 シンキは事前に書物で学習していた陣形の展開がうまくはまり、感嘆を漏らす。
 あまりにシミュレーション通りでわずかに恐ろしくなるほど。
「いや、でも本番はここからだ……」
 コウの軍の兵士達の指揮が下がり、動きが鈍っているのが目に見えてわかった。
 その時、
「伝令! 敵援軍が襲来!」
「なんだって!?」
 シンキは想定と異なる事態に驚愕する。
「数は不明! ですが装備を見るところ、かなりの戦力だと思われます!」
 コウの軍の兵士達の間を縫って前進してくる銀色の部隊。
 眩い輝きは立派な兵装の光沢が反射する陽の光だった。
「銀色のヘルム……なんだ、あの部隊はっ」
 動揺を隠せないシンキ。
 すると銀色のヘルムをかぶった部隊の後方でそのヘルムを脱ぎ捨てた兵士が一人。
「あ、あれはっ!」
 ヘルムの中から出てきたのは大きなお団子を結った髪。
 そして幼いその顔はシンキが見たことのある人物だった。
「よく来た。チュン」
 コウは無表情のまま、しかし褒め称えるようにして自分の軍勢の前に出たチュンを迎えた。
「チュン!? どうしてここにっ」
 その姿は本来ここにないはずのもの。
 シンキが驚愕していると、リタからの通信が入った。
『シンキ! まずいっ、足止めしていたはずのチュンの部隊が消えた!』
「なんだって!?」
 それは予定していない出来事。
 チュンはリタの罠によって足止めすることによってシンキの進軍の害にならないようにと考えられていた。
 だが、今確かにシンキの軍の前にはチュンがいる。
「ど、どうして……」
『ま、まさかっ』
 リタは考えを巡らせ、答えに触れる。

Blind Justice Ver2.71
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