ぽまいら〜081211111 作:ハナクソ☆ホジッタ

 リタはシレジア王国の中を進みながらシンキに説明する。
「この大陸では古くからいる者が優勢を勝ち取る傾向がある。それは蓄積された知識があるからだ。どこでもある話ではあるが、この大陸ではその傾向がかなり強い」
 長く住まえばそこで暮らすための理知を得られる。
 それが体に染みこめば染みこむほど素早く的確な行動をとることが可能になる。
「俺はそんな古参の知識をがむしゃらにかき集めて吸収した。来る日も来る日も。危険な戦場にとびこんだり、国家に忍び込んだり、いろいろ綱渡りをしたものだ」
 リタがしてきたその綱渡りはしくじれば捕縛され、命さえ危ぶまれることばかり。
「そこまでしても俺は知識を得る必要があった。やつら、古参に勝つために」
 勝利を語ったその言葉に込められていた憤怒や復讐の念をシンキは確かに感じ取る。
「ふう。とにかくだ。俺はそうして知識を得て、この国を作った。まだ誰にも悟られていない。新参者だけの国だ」
「へえ……」
「お前は特にやつらへの恨みがあるだろう。ただないがしろにされただけじゃあない。根も葉もない罪を着せられたんだからな」
「そうだ。どうやってかわからないけど。ってあれが根も葉もない罪だなんてわかるのか?」
「ああ、あれのカラクリはこうだ」
 そう言ってリタは亜空間に手を入れてペットを取り出す。
「いけ、ガハク!」
「うお!」
 リタはペットを使用し、シンキに手鏡を投げ渡す。
「見てみろ。お前の今の姿を」
「え……? お、俺じゃない!」
 手鏡の中に己の顔を映してシンキは目を丸くする。
 その顔はまさしくリタのものだった。
「で、でもリタはそこにいて……」
「このペット、ガハクは姿を変えることが出来る。手下の誰かをお前の様相に変えさせてガイア神国と内通させたんだろう」
「まじかよ……でも出国記録のほうは」
「あれは、これだ。ホーリエ、映し出せ!」
 さらに手元からリタがペットをしようすると、ペットは光となって宙に消えた。
 そして間もなくして文字となって降り注ぐ。
「完了したな。おい、衛兵!出国簿を持ってこい」
 リタの命令を受けて衛兵が出国管理所から急いで出国簿を持ってきた。
「こ、これは!」
 その出国簿には確かにシンキの出国記録が記載されている。
「こうしてペットで偽装することが可能だ。お前はろくにものを知らないからまんまと騙されたってわけだな」
「そんな……でもこれをもってみんなに訴えかければ……」
「無駄だ。この一連の偽装を指示したのはおそらくコウだろう。取り巻き達にいくらいったところで意味がない」
「くっ……」
 シンキは歯噛みしながら悔しがる。
「そう悔やむことは無い。なぜならお前には復讐の手立てがあるんだからな」
「復讐の、手立て……」
「そうだ。お前にはもうこの国がある。そして俺達新参者がいる。あのふてぶてしい古参を倒すための知識も、全てが揃っているんだ」
「……」
 シンキは俯いた。
 リタの言葉に希望を感じなかったわけではない。
 ただ迷いがあった。
「どうした」
「いや、確かにあんたの言ったことは正しいんだと思う。だって俺の罪について話し始めたのはコウだったから」
 シンキを追放する旨も取り仕切ったのは全てコウだった。
 全ての絵図を書いたかどうかまでは判断できなかったものの、思い返せば手慣れた動きだったと思える。
「でも、どうしてコウがそんなことをしたのか。わからないんだ」
「そうか。そこまで迷いがあるなら無理に引き留めはしない。この大陸からでて他所で居場所を見つけるといい」
 この秘密基地とも呼べる場所を知ってしまったシンキは始末されてしまうかという不安に駆られたが、そこまでの処分ではないことに安堵する。
「使いを出そう。この山の裏手には港がある。そこから他の大陸へ向かえ。悪いがこの場所を知ってしまった以上、大陸の中にいられてはまずいからな」

Blind Justice Ver2.71
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